「あの院長先生、一人あたしの担当にしたいお母さんがいるんですけど、良いですか?」
「どちらさん?」
「あのお母さんです」


あたしが指差す方向を見て院長先生が驚いた声でこう言った


「そう、あの子、良いわ。頑張ってきなさい!」


院長先生があたしの背中を押した


「あなたも立派になったわね。もう見習いじゃなくて本物の助産師になれたのね」
「えっ!?認めてくださるんですか!?」
「えぇ、頑張ってくださいね!」
「あっありがとうございます‼‼‼‼」


深々と頭を下げて院長先生がいなくなるまで待った


やった、本物の助産師になれた


嬉しくてうれしくて、涙が出そうになるのを必死でこらえた


さっ仕事しなくちゃ


遅くなる、と健太に電話した


健太は分かった、と言って電話を切った


「峰岸さん、3番に入ってください」


彼女の名前は峰岸 佳奈(みねぎし かな)さん


彼女はあたしが初めて担当する患者さんだった


「あっ、さっきのおねぇさん」


彼女は嬉しそうに笑った


「さっきはどうも」


お母さんに挨拶をしてあたしは椅子に座った


「じゃー佳奈ちゃんここに座ってくれる?」


佳奈ちゃんをいすに座らせて診察をした


「はい!」


それから診察が始まった