健太君をほっぱってあたしは彼に近づいた


「あの‼‼」


あたしの問いに、その男は振り返った


この顔・・・健史朗さんに間違いない


健史朗さんの隣には、女性がいた


健史朗さんは驚いた顔をしてから真剣な顔に戻った


「君は・・・莉子ちゃんじゃないか」


あたしのこと覚えてた!


「莉子!どうしたんだよ!」


肩で息をしながらあたしの隣に駆け寄ってきた健太君


彼に視線を向けてからもう一度あたしは健史朗さんに目を向けた


「健史朗さん!今までどこに居たんですか!?」
「えっ・・・優子から聞いてないのか?」


久しぶりに、“優子”という名前を聞いた


あたしは目にいっぱい涙をためて彼をグーで殴った


でもたぶん全然痛くないだろう


驚くだけだった


「ママは...ママは出産で死にました‼‼」
「はっ!?冗談はよしてくれよ」


鼻で笑った健史朗さんをあたしは見逃さなかった


このバカにした目


この目があたしは大嫌いだった


「ふざけんな!!」