入学式…
新学期…
何も変わることのない日が続いていくんだと思ってたわたし、川中瑠璃(かわなかるり)。
でも…今日から……
この前の入学式の日から変わってしまった。
ずっと女子校で過ごしてきて…だけど、パパの転勤で共学の中学校に通うことになってしまった…。
…入学式も思ったけど…なんで…なんで……こんなに男の子が多いの…?
右を見ても前を見ても男の子…
…男の子苦手なのに……。
ドンっ
「えっ…」
べしゃ…。
背中に何か衝撃がきてそのままバランス崩し転んでしまった。
…ひざが痛い。
「ごっごめん。大丈夫っ……」
男の子の声。
えっ…えっ?怖い何か言われるー…。
怖くて下を向いていると、
「わぁっ、かわいい子」
(かわいい子…?)
回りを見る。
「ぷっ、……君だよ。君のこと。ごめんね。立てる?」
何か裏があるんじゃ…
自力で立ち上がりながら気づく、両足から血が浮き出ている。
「ってけがっ」
「本当ごめん。保健室っ保健室行こ?」
「…大丈夫です。ありがとうございました。」
お辞儀をしその場を離れた。
「待っ…って行っちゃった」
保健室で消毒をしてもらい教室に着く。
ついてないな…。
男の子とぶつかるし、けがするし。
席は、四方七方男の子。
隣はバックからして女の子っぽい。
後ろは、まだ来てないな。
はぁ……帰りたいよ…。
こんなんでわたしやっていけるのかな…。
トントン
肩をたたかれる。
「?」
プニッ
へ?
振り返ると、指が頬を押す。
さっきの男の子…。
「初めまして?じゃないか。さっきも会ったから。」
「さっきはすみませんでした。追いかけようとしたけど保健室の場所が分からなくて…。」
勢いよく頭を下げられる。
「……」
何て反応したらいいの分からない。
「たっ、対したことなかったんで気にしないで下さい」
「本当にごめんね。あっ、自己紹介がまだだった。」
「俺、佐原晶(さはらしょう)って言うだ。よろしく。」
「川中瑠璃です。よろしくお願いします。」
『……』
前に向き直り、いすに座る。
「ーって会話終了。もしかして俺嫌われてる?ねぇ」
肩をたたかれる。
怖い…怖いよ…
体が震えだして、目の前がぼやけてくる。
「ちょっと何泣かしての?」
「やっぱり俺が泣かしたのかな…」
「よしよし、大丈夫?」
「私隣の席の岡松碧(おかまつあお)だよ。」
「川中瑠璃です。よろしくお願いします。」
「よろしくね。」
(あれ?笑顔だ。)
今日はまだ授業はなく1年間のスケジュールや校則、委員を決めたりで朝の授業は終わった。
今は、お昼休みで屋上で碧ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べている所。
碧ちゃんは今まで回りにいなかったタイプだったけど授業中ちょこちょこ話している内に打ち解けた。
「瑠璃ちゃん達も屋上来てたんだ?」
びくっ
「あのさ、俺のこと嫌い?
さっきから全然目線合わせてくれないよね。」
「…嫌いというか男の子は苦手で」
佐原君は笑顔を向けてきた。
「そっか。嫌われてないんだ。良かったー!!
けど、話す時は目を見てちゃんと話すべきだよ」
「……」
どうしようこの空気…。えーと…
「あっ、瑠璃のお弁当おいしいそう」
「ほんとだー」
「瑠璃、口あーん」
ぱく…
「おいしいです。」
「うれしいな。手作りなんだ。」
『すごいー!!』
「碧ちゃん、はい」
「あーん。」パク
「おいしい!」ぎゅっ
「あんたほんとかわいいわ」
「瑠璃ちゃん、俺も俺も」
「…えっ…」
「瑠璃ちゃんの男嫌い俺が克服してあげる。だから……あーん」
「……あの、その…ごめんなさい。わたしっ、結構ですっ」
ーバッタン
屋上から逃げ出してしまった。
そのまま座り込み、いつのまにか涙がこぼれていた…。
(私もあの子、このままじゃいけないと思うんだ。
だから、手助けしてあげる。
けど、無理強いはダメだから。
少しずつ。
頑張ろう、晶!!)
と、碧に言われたものの…
30分以上無言はきつい。
碧の協力で一緒に帰れることになったけど…。
「瑠璃はA区なんだ。私は、C区だよ。おもいっきり真逆なのよね。」
「晶!あんた、確かA区だったでしょ。一緒に帰ってあげて。
あんたでもいないより、いた方がマシだと思うから。瑠璃のことお願い。部活行ってくるね。
じゃあ、瑠璃」
「碧ちゃん待っ…」
『………』
はぁ…、どうすれば…。
「……」
佐原君がため息ついてる。
いいですってお昼に言ったのに一緒に帰ってもらって…
「…佐原君。」
「ん?」
前を歩いている佐原君が振り返る。
「もう家近いから大丈夫です。すみませんでした。」
いつの間にか、佐原君と距離が近づいている。