プルルル………プルルル………



 大丈夫だ。

 あれは、過去の話だから。



「……はい、如月です」

『皇ちゃん?
 良かった!まだ出掛けてなかったー』

「母さん? 何?忘れ物?」



 明るい母の声に、ホッとした。


 大丈夫だ。あれは―――過去。



『お買い物行くときちゃんとガスと鍵閉めてね』

「分かってる」

『ふふっ 皇ちゃんは頼りになるからね!

 明日の夜には帰るから、一緒に荷造りしましょうね』

「……大丈夫だよ。俺達だけで」

『まぁー何言うの!
 ママの楽しみを取り上げるつもり?!

 ママが一緒に荷造りしたいの!
 帰るまで待ってて!』

「……はいはい」

『ハイは一回!』

「はい……」


『ふふっ それじゃあ、気をつけて行ってらっしゃいね』

「ああ。 母さんたちもね。
 父さんに運転気をつけてって伝えて」

『はーい! じゃあ、また明日』



 いつまでも少女のような無邪気な母に、笑ってしまった。