何かに揺すられたような気がしてノロノロと重い瞼を上げた。
「…ん~?何だい、近藤さん。もう朝かい?まったく朝が来るのは早いね。」
揺すっていたのは近藤さんで、表情はいつもの笑顔ではなく心配そうな顔なことに気がついた。…はて、なんでだ?
「…よかった。」
「何がだ?何がよかった、だ。何かあったのかー?」
「…いや、今は確かに朝なんだけど……5日目の朝なんだよ。雪君は5日間一度も起きないから心配でね。」
……ん?5日?
「はて?今なんて言ったのかい?耳がおかしくなっちまったのかもしれねぇからもう一度言ってくれねえか?」
「だから、5日目の朝なんだよ。」
…ちょっと待て。そこまで寝た感じはないのだが、お腹が猛烈に減っているとこから見て本当のことなのか?この近藤さんとは会ってから日が浅いが、こんなくだらん嘘など着く人ではないことはわかる。……じゃあ、そのことは本当…ってか?
「……まじか。すまんな近藤さん。無理矢理にでも起こしてくれてもよかったのに。」
「いやいや大丈夫だよ。それにあんなに疲れていたのだから起こすのは悪いと思ってね。」
「そうかい。ここは近藤さんの部屋だから邪魔になってしまっただろう?」
「そこまで邪魔にならなかったから平気さ。…それより雪君。もう動けるのかい?君のその脇腹の怪我を知っているのはここでは私だけだ。痛いのだろう?」
「いーや。大丈夫さ。…ただ、無理そうだから明日から働かせてもらうさ。…それより近藤さん。…猛烈に腹が減ってるんだが。どうすればいいー?」
グウグウ腹が音を立ててなってますよ。こんちくしょう。
さっき体を少し動かしてみたが、まともに動けなかった。これでは働くと言っても何も出来やしないだろう。それならば早く怪我を直したほうがいい。うん、我ながら正論正論。
「あ、すまんすまん。今何か持ってくるよ。」
「いやー、局長の近藤さんに悪いっすねー。」
止めようとはしない俺。いやー人の親切は受け取るもんだろう。うん。
「これぐらいわね。…じゃあ、待っててね。」
「はーい。わかりましたー。」
笑いながら部屋を出て行った近藤さんに笑いながら見送った俺。…ここ、近藤さんの部屋だよな?