「……チッ。」
走りながらチラリと後ろを見ると、数人の追ってが見える。それに舌打ちをして、次はどこに曲がろうかと考える。
裏小路を見つけ、もう半ばヤケクソになりそこを曲がり右に曲がって…と繰り返すと追ってはどんどん見えなくなり、完全に消えた。
つまり、撒けたのだ。
ホゥ…と安息の溜め息をつき、手のひらで脇腹を押える。
「…痛っ!」
あぁ、痛ぇ…。そう思いながら懐から包帯を出し、脇腹に巻いていく。一応血は止まっていたから念のためだ。
そんなことよりも、
クソッ、逃がしたか…!あいつを殺さなければ気がすまねぇのによ。
拳を握りしめると、寄りかかっていた壁にドンッと殴る。完全なる八つ当たりだ。
「………クソッ!」
逃がした。逃がした逃がした。絶好のチャンスだったのに!自分まで怪我をした!…逃がしたけどあいつ自身は暫くは動けないであろう。結構な深手を負った筈だ。
それを考えると、少し嬉しくもなる。だが、あいつをまだ殺していない。…今日、やるはずだったのに!今頃、あいつは死んでいる筈だったのに!
悔しい、悔しい悔しい!!悔しくてたまらない!!
あいつが死んでないと…!
それは自分の失敗にある。
「……そこの人!」
ああ、声が聞こえる。
だけど意識がぼやける。血は止まっているのに、その前に流しすぎたのか…?
チッ、懐にしまっていた短剣を取り、左腕を少し斬る。そして痛みで意識を覚醒させる。
「なんだー?」
逃げれないのはわかっているので、普通に返事を返した。