「・・・・・・・・・おいで」










先輩の声も全部いつもと変わらないのに

あたしはいつもみたいに

先輩の元へ行く事ができなかった










「・・・・・・・・なした?」









先輩の優しい声が

あたしの耳をすりぬける







先輩、

あたしって先輩にとってなんですか?







・・・・・・・・先輩にとって特別ですか?





















「・・・・・先輩、キスしてください」










あたしの声が図書準備室に響く

先輩は少し驚いた顔をしていた








この関係になってから体なんて

何回も合わせてきたのに

キスは一回もしてくれなかったですよね












・・・・・・・・先輩なりの境界線

‘キス’は特別なんですよね?





























あたしの問いに関しての答えなんて

聞かなくてもわかってる








でも、わかってるのに

また先輩はゆうんでしょ?







質問したのはあたしなのに

また答えられて

傷を増やすの・・・・・・・・・・
















「・・・・・彼女にしかしない」












いつもの台詞みたいにゆう

先輩のその口を塞ぎたい



















「・・・・・・・・・・どした?」









いつもと同じ行為をしようとしているのに

胸の中がもやもやして

すごく気持ち悪い











「・・・・・・・先輩、」









いつもはこれより近づいてるじゃん

今更、何?












「・・・・・・・・・おい」






「え?」





目の前には先輩の顔

唇と唇がくっついているのに



・・・・・・先輩の手が間にあるけど













「・・・・・キスはできない」








・・・・・・もう少しでくっついたのに

こんなにも近くにあるのに・・・・・・












・・・・・・・・・・先輩が、遠い














「ははは、ですよねー・・・っ」








なんだこの作り笑い、下手くそすぎ

気付かないでください、先輩








「あ、あたし用事思い出したんで、帰りますね!」








・・・・・・・・・どうか











ピシャンッ











「・・・・・・・うっ」







扉がしまったのを合図に

涙が溢れてくる










「・・・・・・っ」










よかった、先輩に見られなくて

よかった、我慢できて









・・・・・・・どうしてこんなに

欲張りになっちゃったんだろ




・・・・・・・・どうしてこんなに

先輩でいっぱいになっちゃったんだろ

























・・・・・・・・・・先輩、大好きです







どうか、どうか、






先輩、先輩、先輩













先輩、大好きなんです






























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FROM 遠藤先輩

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いつもの場所




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いつもの先輩からのメール

いつもと同じ文






あたしはまた図書準備室に行く



















「い、市川さんっ」





「は、はい?」







図書準備室の手前の曲がり角

人通りがないから

いつも誰とも合わないのに

後ろから声をかけられてびっくりする








「・・・・俺のこと、わかる?」






「・・・・えっと・・・」







同じクラスではないよね?

顔は見たことある気がするけど・・・・っ

お、思い出せない!







「ご、ごめんなさい」




「市川さんの隣のクラスの山田です」




「は、はぁ」