母さん。まだ早いんじゃない?


今歩かないと、
もう二度と歩けないから。


そんな事無いよ!
元気になって、また歩ける様になるよ。


俺の言葉を無視する様に、ベットから出ようと、必死に、もがいている。


わかった。じゃあ歩こう。


母さんを手伝った。


やっとの思いで、
俺に、もたれ掛かる様に、立てた。


廊下に出ると、
俺から手を離し、
備え付けの、手摺を
持った。


無理だよ。母さん。


母さんの足は振え
倒れそうだ。


あっ!!


母さんが、崩れる様に倒れた。


母さん。部屋に戻ろう。


駄目。


母さんは、頭を強く横に振った。


これが最後。


何が?


自分の足で歩くのが、これで最後。


わかったよ。
母さんの気が済むまで頑張って。


母さんは、必死に歩いた。


俺も、その姿をじっと、見守った。


思ってはいけない事だとは、分っていたが、何となく直感で思った。



これが母さんの歩く最後だと。