俺は、ここ二、三日の間、鍵盤に触れていなかった。
迷いはそのまま音に出るのだが、今日はどうしてか、弾いていて違和感がなかった。
(うん。うまく…弾けてる…かな?)
今夜の食事が美味しかったからなのか、窓から見える朧月夜が美しいからなのか。
ふと、後ろに気配を感じて振り向くと、シオンがソファに深々と腰掛けていた。
「…なんだ、聞いてたのか…。」
シオンは瞳を閉じて、聴いていた。
「じょうずだね。」
俺は苦笑いをした。
一応それなりには名前も知れている。
上手いといえば、上手いのだろうが…。
何か複雑だ。
「こらこら、そこも『ありがとう』っていうところでしょ。顔、しかめない。」
ふふっと責めるでもなく、笑う。
「それに…。」
そう言いながら、ピアノの傍らにシオンは立って言った。
「僕は、ひさぎのピアノ好きだなぁ。」
俺はシオンを見上げた。
あれ、なんだろう。
上手だとか、よく弾けてるとか言われるより、胸に届く。
「ひさぎのピアノは、凛として澄んでる。僕は好き。」
今度は素直に言えた。
「ありがとう…。」
迷いはそのまま音に出るのだが、今日はどうしてか、弾いていて違和感がなかった。
(うん。うまく…弾けてる…かな?)
今夜の食事が美味しかったからなのか、窓から見える朧月夜が美しいからなのか。
ふと、後ろに気配を感じて振り向くと、シオンがソファに深々と腰掛けていた。
「…なんだ、聞いてたのか…。」
シオンは瞳を閉じて、聴いていた。
「じょうずだね。」
俺は苦笑いをした。
一応それなりには名前も知れている。
上手いといえば、上手いのだろうが…。
何か複雑だ。
「こらこら、そこも『ありがとう』っていうところでしょ。顔、しかめない。」
ふふっと責めるでもなく、笑う。
「それに…。」
そう言いながら、ピアノの傍らにシオンは立って言った。
「僕は、ひさぎのピアノ好きだなぁ。」
俺はシオンを見上げた。
あれ、なんだろう。
上手だとか、よく弾けてるとか言われるより、胸に届く。
「ひさぎのピアノは、凛として澄んでる。僕は好き。」
今度は素直に言えた。
「ありがとう…。」