「ねぇ、僕、旅館に泊まってみたいな。」

また王子様の新しいご要望だ。

「駅前のホテルで良いだろ?」

そう返事したが、シオンは、ぶうっとした顔をする。

「京都といえば旅館でしょ?」

その定義はなんなんだ?

「だいたい、男二人で旅館って、ありえねぇって。」

「そうなの?」

「そうなの!」

シオンは、少ししゅんとして、じゃあしょうがないねと言った。

「……あぁ、もうわかったよ!旅館で良いよ!」

結局俺が折れた。

「ほんと!?やった!僕、あこがれだったんだ。部屋に食事もってきてもらって食べるの。」

こいつにとっては、きっとすべてが新鮮なんだろうな。

にしても、飛び級したような、すごい奴には見えない。

かといって子供かと言えば、俺よりずっと聡い。

つかめない奴。