シオンは、京都に着くまで、始終ご機嫌だった。

聞けば、新幹線に乗るのが、夢だったそうな。

「駅弁!駅弁!」

鼻歌を歌いながら、駅弁を抱える姿は、ちょっとミスマッチでおかしい。

笑いをこらえていると、シオンは言った。

「ひさぎ、笑ってる方が、いいよ。」

ドキッとした。

昔、霧野さんにも同じことを言われたのを思い出した。

「…前に、同じこと、言われた。霧野さんに…。」

俺が言うと、シオンは少し笑って、そう、と答えた。

やっぱり、霧野さんのピアノ、もう一度聴きたかったなぁ。

無性に、あのピアノの音が聴きたくなった。

明日、明日になったら聴ける。

頼んで、少し弾かせてもらおう。

そう思いながら、京都駅におりたったのは、夕方近くだった。