「そういえば、大橋ピアノの購入者って、どこに住んでるんだ?」

肝心なことを忘れていた。

シオンは、連絡先の書いた紙を、俺に渡す。

「京都…、の、宇治の方か。ちょっと遠いな…。」

ちらりとシオンを見る。

「…やっぱ、…着いて来るんだよなぁ…?」

と、聞くと、当たり前だという顔を見せる。

断る理由もないし、今のところ問題もない。

というより、助けられてることの方が、多いか…?

いやいや、そんなことないと、首を振り、今後のスケジュールを考える。

「今から向かえば、夕方には京都に着く。宇治には明日行くけど、良いか?」

「うん。」

シオンは短く返事をすると、立ち上がった。

「じゃあ、行こう。」

そう言って、まるで遠足に行くみたいに、楽しげに歩き出した。