からかってるのかと、シオンを見る。

でも、シオンはまじめな顔で、俺を見ている。

「勘弁しろよ…。」

眉を下げて言うと、ふふっと笑う。

「心配しなくても、ひさぎは男前だよ。そうじゃなくて。」

シオンは、やわらかい声でつづけた。

「今のひさぎの顔、失敗した絵の具の色みたいだなって。」

「…え…?」

「いろいろ混ぜすぎちゃった。そんな色。」

なんとなく言い当てられた気がして、言葉につまる。

「僕ね、小さい頃、虹を描くには、色を全部混ぜれば七色になると思ってたんだ。」

バカだよね、と、シオンは笑う。

「でも、どんなに混ぜても七色にならなくて、どんどんわけわからない色になっちゃった。」

「…で…、どうしたの?」

俺は、その時のシオンをなんとなく想像して、思わず小さく笑う。

「泣いた。」

「…泣いた?」

「うん。すごく泣いた。そしたら、おばあちゃんが、『そういう時は、一色だけで塗りなおせば良いのよ』って、教えてくれたんだ。」