地図を片手に、ピアノ屋を探した。

「なんだ?…倉庫…?」

教えられた場所には、小さな倉庫があった。

よく見ると『中古ピアノあります』と、小さな小さな看板がでている。

どうやら店を構えている訳ではなく、ネット販売とかで成り立ってるってところだろう。

半分くらい空いたシャッターから、中を覗いて見る。

4〜5人くらいで作業しているのが見えた。

「何かご用ですか?」

そのうちの一人が、俺に気付いて話しかけて来た。

「あの、一か月くらい前に、こちらで大橋ピアノを引き取られませんでしたか?見せていただきたいのですが。」

その店員は、俺達に中に入るように促して、言った。

「大橋ピアノ?大橋、大橋…。そんな名前のあったかな…?」

ぼそぼそ一人ごとを言っている。

たかだか一か月前の事を、覚えていられないのか?

少しイラっとしながら、付け加えた。

「OHHASHIってロゴが入ったピアノですが。」

「ん〜…。あぁ!はいはい、あのピアノですね。確かにうちに引き取りました。」

やっと思い出したらしい。

「残念ながら、もう売れてしまいましたよ。」