ホテルを出てから、バス停まで歩く。

「ねぇ、僕、あれ食べたい。」

シオンが指差したのは、ワゴン車の鯛焼き屋だった。

「あれ、かなり甘いぜ?」

「うん。あんこの入った、ワッフルみたいなのでしょ?魚の形の。」

目がキラキラしてやがる。

あぁ、はいはい、わかりましたよ。

食べたいんだね?

俺は鯛焼きを何個か買って、シオンに渡した。

朝飯にはちょっとヘビーだけど、ま、時間短縮でよしとするか。

シオンは嬉しそうに受け取ると、少し考えて聞いてきた。

「ねぇ、頭から食べた方が良い?尻尾から食べた方が良い?」

知るか!

俺は横目で、ちらっとシオンを見て、鯛焼きを腹側から、がぶっと食ってやった。

シオンは、それを見て、ひとしきり笑うと、自分も腹側から食べ始めた。

そして、食べ終わってしばらくしたら、バスが来た。

俺達は、バックパッカーみたいな成りで、ちょっと目をひいたが、気にせず乗り込む。

バスは町をどんどん離れていった。