どれくらいの時間だったのか。

俺は、さぞかし間抜けな顔をしていただろう。

「ねぇ、聞いてる?」

また話しかけられて、やっと我に返る。

「あぁ…、聞いてる。って、閉店!?」

俺は慌てて聞き直した。

こくりと頷く姿に、また目をうばわれる。

歳は多分15〜16歳くらいだろうか。

彼は碧い目をしていた。

およそ太陽が似合わないような、真っ白な顔に、栗毛色の髪。

無造作に伸びているし、身なりもラフな感じなのに、彼の存在は高貴さえ感じる。

「なんで閉店…したんだ…?」

少し嫌な予感を抱きながら、聞いた。

「オーナーが亡くなったそうだよ。」

恐れていた答えを聞いて、俺は言葉を失う。

「君は、この店に来た事あるの?」

彼は俺に尋ねた。

その美しく整った顔を、少しかしげている。

「あ…えと、昔ちょっと通ってたことがあって…。」

ふと疑問に思った。

「なんであんた、霧野さんが亡くなったの、知ってんの?」

彼は坂の下を指を指して、

「あそこの家のおばあさんに、聞いた。」

彼は静かに答えた。