愕然とした。

彼女の音楽は、愛し愛されて、その中から生まれるものだった。

家を捨てた事で、彼女の中で、何かが変わってしまったのだ。

そうさせてしまったのは自分だと、霧野は初めて後悔した。

彼女のピアノに惹かれた。

彼女の音楽で、生まれ変われた。

なのに自分は、彼女の音楽を壊したのだ。

何も言えなかった。

謝ることしかできなかった。

「どうして謝るの?二人で決めたことよ。」

彼女は静かに笑った。

とても静かに。

なんてことをしてしまったのだろう。

それからというもの、気付けば、彼女は空を良くみていた。

遠く、遠く。

だから霧野は、彼女の元を去ることにした。

もう一度、彼女のピアノを聴きたかった。

でも、二度とそれはかなわないことになるのだ。