その日を境に、霧野はジーンと、そのカフェで逢うようになった。

そして話していくうちに、色々とわかってきた。

ジーンのピアノが、何故あんなに心に響くのか。

彼女が愛し愛されているからだ。

彼女は、家族を、友人を、隣人を、とても愛していると言う。

そしてピアノを弾く時には、愛する人の為に弾くという。

霧野に決定的に欠けているものだった。

「あら、難しく考えるからいけないんだわ。私のピアノを聴いて涙した、あの時のことを、思い浮かべながら弾いてみたら?」

いとも簡単だとでもいうように、笑った。

しかし、この言葉をきっかけに、霧野のピアノは変わっていった。