あきらは、じゃあね、と言ってでていった。

「お疲れのところ悪いけど、ちょっとショパン弾いてくれる?」

そう言ってカウンターに座った。

俺は頷くと、ゆっくり弾いた。

ノクターン 第20番 嬰ハ短調


すべてはここから始まったんだ。

そして俺はいまだにショパンに恋をし続けている。

瞳を閉じて聞いているシオンに言った。

「ありがとうな。」

シオンはカウンターに両手を乗せ、両手の上に顔を乗せ、まだ静かに目を閉じている。

「寝てる…のか…?」

俺が聞くと、静かに寝息が聞こえる。

もう一度同じ曲を弾いて、シオンの眠りを夢の中に誘ってやることにした。

こんなピアノも悪くないな。