雷の様な拍手の渦が、会場をうめつくした。

イスから立ち上がった俺は、驚きのあまり、固まってしまった。

シオンも座ったまま、客席を見る。

津波の様なスタンディングオベーション。

しばらく呆然としていると、コンマスがシオンの肩をそっとたたく。

はっとして、シオンは俺を見た。

俺は頷くと、シオンのそばまで歩み寄る。

イスから立ち上がったシオンは、一瞬ぐらりと倒れたかける。

慌ててかけより、腕をとって支える。

「大丈夫だよ。大丈夫。」

俺を見て言う。

少し肩で息をしているが、俺の腕を握り返した手は、力強かった。

「立てるか?」

俺が聞くと、もちろんと笑った。

二人で観客に向き直り、今度はしっかりと頭を下げた。

本当に感謝の気持ちでいっぱいだった。

拍手はなりやむことを忘れたかのように、ずっとずっと響いた。

この幸せの空間を、俺は絶対に忘れない。

忘れない。