それからはあっと言う間に、過ぎて行った。

俺はシオンのリサイタルがおわるまで、オーストリアには戻らないことに決めた。

休学の申し入れを大学に電話で頼んだ。

かなり渋られた。

今回の突然の失踪とドタキャンに、学校側もかなりご立腹のようだった。

でも、俺を退学にしたり、大学を辞められたりするのは得策では亡いと思ったのだろう。

とりあえず、九月には復帰すると約束をして、話はまとまった。

「まだまだ、俺の利用価値はあるって、そう思ってんのかね…。」

俺が呟くと、シオンはやっぱり、ぽかっと頭を叩いた。

「利用価値とか言わないの!ひさぎはみんなに求められてるってことなの。」

頭を擦りながら、俺はシオンに言った。

「みんなにどう思われようが、別にいい。俺は自分が大切にしたいことを、したいだけだからな。」

やっぱり俺様的発言だよな。

「ひさぎ、男前〜!」

シオンは楽しそうに言った。