そうだ。

エレノアさんにとっては、霧野さんは父親なんだ。

逢った事はないとはいえ、辛いだろう。

「今頃、空の上で、久々の再会に喜んでいるでしょうね。」

少し涙ぐみながら笑う。

「シオン、空の上に届けられるよう、しっかりとリサイタル頑張りなさいね。」

日本語はあまり得意ではないと言った、シオンのお父さんも、ゆっくりとそう言った。

「うん。頑張るよ。あと、リサイタル終わったら、僕、手術するよ。」

シオンの両親の動きが止まる。

「僕、手術受けるよ。どうしても生きたいんだ。もっと色んな音楽に出会いたい。」

今度こそ。エレノアさんは、顔をくしゃくしゃにして泣いた。

「心配かけて、ごめんね。もう大丈夫だから。もう迷わないから。」

シオンはしっかりと、自分の意志を伝えた。

「シオン…、あなた、素敵なお友達が、出来たのね。彼の…お陰なのかしら。ありがとう、ひさぎ君。」

真っ正面から言われて、いたたまれなくなる。

何も体したことはしていないのだから。