全く予期せぬ発言。

「俺…の…、為に?」

「うん。でも僕の為でもあるんだ。」

シオンは笑う。

「僕のピアノ、おじいちゃんにそっくりだった?」

頷く。

「ひさぎ、おじいちゃんのピアノ、聴きたいって言ったよね。」

まさか、それだけの為に?

「その為に、わざわざ心臓に負担かけるなよ…!」

「それだけじゃないよ。」


真剣なまなざしで、俺を見た。

「僕がそうしたいんだ。ひさぎの中に、僕の音楽を残したいんだ。だから聴いて欲しい。」

その言葉に込められた、悲痛の叫びを知っている。

知っているから、何も言えなかった。

「だめ…かな…?」

俺はシオンの為なら、なんでもしてやりたいと思った。

だから…。

「分かった。1音も聞き逃さず、全部聴いてやる。だから…、だから絶対無理はするなよ。」

嬉しそうに笑うと、うんと頷いた。