残念なのは、君のショパンをもう一度最後に聴けなかった事かな。

そう、もう一度、私のピアノで弾いて欲しかった。

君のショパンを。

今でも、初めて店に来た君の事を思い出すよ。

君のピアノは、変わったかい?

誰かのおかげで変わったかい?

それとも誰かの為に変わったかい?

それを知らずに逝くのは、少し残念だが、忘れないで欲しい。

君のピアノを愛している人がいることを。

私は君のピアノがとても好きだよ。

ありがとう。

そしてさよなら。』

俺は唇を噛み締めた。

「霧…野さん…!」

こんなに切ないのは何故?

シオンに?

霧野さんに?

もう訳が分からないほど切ない。

ただただ切なかった。

「ありがとう…ありがとう、霧野さん。」

俺は大事にその手紙をたたんで、バックにしまった。