俺は、その霧野さんからの手紙を受けとる。

驚いた。

俺宛に手紙を書いてたなんて…。

俺は封筒をあけて、その手紙を見る。

柔らかい綺麗な字で、こう書いてあった。

『八月 桐儀 様

元気だろうか。

たまにテレビで君を見掛けるよ。


君がこの手紙を読んでいるという事は、もう私も店もなくなっているということだね。

いつでもコーヒーを飲みにおいでと言っておきながら、本当に申し訳ない。

でもコーヒーを飲みに来たってことは、ちょっと疲れてしまったんだね。

君のことだから、色々と悩んでいるのだろうね。

そんな時は、また一度とまってごらん。

道草も良いかもしれない。

思わぬ所に、大切なものが隠れていたりする。

自分の望む事、求められる事は、必ずしも同じではない。

でも同じならそれは運命でもあり、奇跡でもある。

どうか、見落とさないで下さい。

君の大切なものを。

君の望むことを。

そして自分の心に正直に。

長く生きれば生きる程、しがらみは増えてくるものだ。

それらを取り除いて、自分の中の真実と向き合って欲しい。

私に出来なかった事だ。

差し延べられた手を、大事にして欲しい。

音楽をを愛して欲しい。


もっと音楽に愛されて欲しい。