病室中に、シオンの泣き声が響いた。

何事かと、ナースが飛んで来たが、察したようで、こっそりと席をはずしてくれた。

長い間、泣いていた。

きっと、何年分かの涙だったんだろう。

シオンは、いつも柔らかく微笑んで、本当の激情を隠していたのかもしれない。

彼の音楽への情熱が、津波の様に、俺に押し寄せる。

今、俺がシオンにしてやれること。

いったい何が出来るんだ?

「俺が…、俺が弾いてやる。」

俺は無意識のうちに言った。

「もし、弾けなくなったとしても、俺がかわりに弾いてやる。」

今度ははっきりと明確に告げる。

「ひ…さぎ…?」

一瞬シオンは驚いた顔で、俺を見上げた。

「だから、心配しないでちゃんと手術してこい。まっててやるから。」

何て俺様な言い草だ。

分かっているけど、優しい言葉なんか言ったら、俺まで泣いてしまっただろう。