「弾いてみて、思ったんだ。」

かすかに肩が震えているのが、わかった。

「僕、死にたくないって。」

心臓がぎゅっとした。

「死ぬのが、急に怖くなった。」

シオンが俯く。

「もし弾けなくなっても、誰かの音楽を愛したい。」

初めて見せた、シオンの涙は、とても切ない涙だった。

「生きて、どんな形でも良いから、音楽を愛したい。」

切実な心の叫びに、胸が痛い。

「今更そう思うのは、我儘かな…。」

泣きながら笑わないで欲しいと思った。

「我儘なもんか!」

俺は握り締めた手を開いて、シオンの頭に手を乗せた。

少し乱暴なくらいに、撫ぜた。

「それに、子供は我儘で良いんだ。」

シオンは瞳を大きく開き、俺を見上げた。

そしてまた、大粒の涙を流して笑った。

「だから…さ、無理して笑うなって…。泣きたい時は泣いて良いって言ったの、シオン、お前だぜ?」

その言葉が合図の様に、シオンは大泣きした。

それこそ子供みたいに。