「どうしても、おじいちゃんのピアノに触れたくて、ひさぎに着いてきたんだ。ごめんね、黙ってて。」

俺は、ふと聴いた。

「何で…黙ってたんだ…?」

シオンは柔らかく微笑んで、言った。

「だって、ひさぎも自分がピアニストって言わないから。僕も言わなくて良いかな〜って。」

最初から知ってたのか!

喰えない奴だ。

「それに…。」

シオンは付け足した。

「お互い、余計なしがらみないほうが、本当の友達って感じでしょ?」

シオンには負ける。

「僕、友達がほとんどいないから、友達がどういうものかよくわかんなかったけど、ひさぎと出逢って、やっと分かった。」

これも意外だった。

こんな素直で人に好かれる、俺とは正反対の性格だ。

友達は多いんだろうと思い込んでいた。

「友達、いないのだけは、一緒だな。」

俺が言うと、楽しそうにけらけらと笑った。