「だけど、霧野さんも一か月前に亡くなってた。」

目を閉じてシオンは呟く、

「もっと早く…もっと早く来ていれば、伝えられたかもしれない。そう思ったら、何だか離れがたくて。」

シオンはゆっくり目を開けて、こちらを見た。

「何日も、あの『cafe ♪』の跡地に通ってた。」

不思議そうに笑った。

「そしたら、ひさぎに出逢った。」

やっと繋がった。

俺とシオンの奇跡の種が。

「ひさぎは、僕の全く知らないおじいちゃんの事、知ってた。」

俺はシオンを真っ直ぐ見た。

吸い込まれるような青。

「おじいちゃんが弾いてたピアノを知ってた。」

青の瞳が揺れる。

「そのピアノを弾いたことがあると言った。」

小さな声で、羨ましいなって思った、と呟いた。

だから旅の途中、あんなに霧野さんやカフェやピアノの事を聞いたのか。