「でもね、おばあちゃん、亡くなる前に、僕に言ったんだ。」

はっきりとした声で、シオンは俺に言った。

「霧野さんに伝えて欲しいって。」

ジーンさんはシオンに、こう言った。

『秀一に伝えて。あなたとの間に出来た子供のおかげで、とても幸せに暮して来られた。家族ができて、愛が溢れていた。だから知って欲しい。あなたも独りじゃないのよ。あなたにも家族がいるということを。』

「おばあちゃん、霧野さんは絶対誰とも結婚なんかしてないって、信じてたみたい。」

すごいよね、とシオンは笑う。

「二か月前に、おばあちゃんは亡くなったって言ったでしょ?」

俺は黙って頷く。

「だから、おばあちゃんの言葉、霧野さんな伝えたくて、日本に来たんだ。」

シオンは窓の外を見る。

「あなたにも、家族がいますよって…。」

そして空を見上げる。

またあの顔だ。

切ない、今にも消えそうな顔。