「おばあちゃんね、いつもおじいちゃんの話、してた。」

ジーンさんは、まだエレノアさんが幼い頃、何度も霧野さんを探そうとしたという。

ジーンさんはウェスティン家の屋敷も売り払ってしまい、住まいをかえてしまった。

霧野さんが探しにきても、わからないだろうと思い、ジーンさんは、こちらから探すしかないと、何度も日本に訪れたと言う。

しかし何も手掛かりがなく、先に進めなかったそうだ。

「僕ね、小さい頃からピアノ大好きだった。上手に弾けると、おばあちゃん、褒めてくれて。」

シオンは懐かしそうに言う。

「ある日、こっそり練習していた曲を、おばあちゃんのお誕生日に弾いたんだ。」

シオンは俺を見て続けた。

「そしたらおばあちゃん、突然泣き出して。僕は大慌てでね。」

何となく想像出来て、くすっと笑う。

「僕のピアノ、おじいちゃんのピアノにそっくりだって、泣いたんだ。」

少し目をふせて言った。

「その曲ね、ショパンのノクターン 第20番 嬰ハ短調。」

俺が初めて、霧野さんのピアノを聴いた時の曲と、同じだった。