「僕のおばあちゃんね、霧野さんとイギリスで恋に落ちたって言ってた。」

シオンは話始めた。

その恋物語は、俺が霧野さんから聞いた話と、ほとんど同じだった。

ただ違ったのは、霧野さんがいなくなってから、ジーンさんのお腹に新しい命が宿っていたことが分かったという事実だった。

ジーンさんは、家族の反対を押し切り、産んだそうだ。

それがシオンの母親のエレノアさんだ。

「おばあちゃん、家も継がず、結局ウェスティン家はおばあちゃんの代でなくなったんだ。再婚もせずに、母一人子一人で暮らしてきたんだって。」

エレノアさんは、ジーンさんから、見たことのない父親の話を、たくさん聞いたという。

とても素敵な人だと。

とても素敵なピアノを弾くと。

エレノアさんも、気付けば両親の才能を受け継いで、ピアニストになっていた。

彼女は海外公演で知り合った、クレオ・ギルフォードと知り合い、その後結婚して、シオンが産まれた。

両親が海外公演が多いため、シオンは祖母のジーンさんに預けられることが多かった。