シオン・ギルフォード、16歳。

イギリス出身。

父親はクレオ・ギルフォード、世界的に有名なバイオリニスト。

母親はエレノア・ギルフォード、今は引退したが、ピアニストだった。

シオンも3歳の頃からピアノを始めたと書いてある。

コンクール履歴を見ると、まったくと言って良いほど参加していない。

確かに参加していれば、俺と一度くらいどこかで顔を合わせているはずだ。

ましてやあんなピアノを弾くくらいだ。

なのに、今年に入ってから、ロイヤルフィルとコンツェルトをして、一気に話題になったという。

世界中の評論家達が、こぞって褒めたたえた言葉が、雑誌に羅列されていた。

中には恥ずかしくなるほど、大袈裟な賛辞もあったが、シオンのピアノを聴いてしまった今なら、頷ける。

そして今年の夏に、日本公演をすると書いてあった。

チケットは完売。

しかし、これだけの人気にもかかわらず、マスメディアの前には出てこない。

(そりゃそうだろ、こんなところにいるんだから…。)

そして次の文章を見て、また驚いた。