救急車が到着するまでのわずかな時間が、永遠のように長く感じた。

シオンは苦しそうに、浅く息をしながら、運ばれて行った。

俺も一緒に乗り込み、病院に着いて行った。

すぐに医師がかけより、俺に色々状況を聞く。

手短に話すと、シオンの身元を尋ねられた。

俺は何も知らなかった。

その事実に愕然としながら、ふと、シオンの鞄からパスポートを探した。

あっさりと見つかった。

パスポートには何か挟んであり、開いてみると、わからない文字がいっぱいだったが、診断書であることはすぐにわかった。

それを医師に渡す。

目を通すと、看護婦に指示を出した。

「彼の持病の処方箋だったよ。」

その医師は、心配気な顔をした俺に、優しく言った。

少しほっとして、パスポートの名前のページを開き、医師に見せた。

見せたが、見た俺も一瞬固まる。

(シオン…、シオン・ギルフォード…?)

医師はパスポートを手にすると、早足で処置室に入って行った。

残された俺は、はっとして記憶の断片をさぐりまくった。