「…シオン…?どうした?」

徐々に寄せられる眉に、俺は不安になる。

「黙ってて、ごめん。」

また同じように言う。

「いいよ。そんなこと。弾けたって弾けなくたって。」

俺はソファから立上がり、シオンの元に歩く。

ピアノのイスに座ったままのシオンは、俺を見上げて首を振った。

「そうじゃ…ない。」

さらに眉を寄せて、右手で着ているシャツの胸の辺りを、ぎゅっと握り締める。

「おい…?シオン?気分悪いのか?」

良く見れば、顔色が少し悪い。

「ごめんね…。」

「もういいから、ソファで横にならしてもらえ。」

俺が言うと、シオンは俺の腕をつかんだ。

そして、そっと呟いた。

「おじいちゃんなんだ。」

「…は…?」

訳がわからず、聞き返す。

「霧野秀一は、僕の…おじいちゃん…なんだ。」

俺はここ最近で一番驚いた顔をしたに違いない。