「あなたのピアノは、とてもまっすぐで、素直。」

ふふっと笑った。

「でも、先ほど聴いたピアノ、前と少し違うみたいね。そうね…。」

う〜んと考えて、言った。

「そう、優しくなった気がしたわ。」

俺は驚いて藤堂さんを見る。

「あら、何か変なこと言ったかしら?」

俺は慌てて言う。

「い、いえ…。あの、そんな風に言われたのは初めてで…。いつも冷たい感じとか、そんなだったんで…。」

彼女は優しく言った。

「あなたの中で、何かがかわってきているのなもしれないわね。人は、時と共に変わるものだわ。良い方向に変わりたいものだわ。」

何とも重みのある台詞。

「あなたのこれからが楽しみ!だから、このピアノを差し上げましょうね。」

またお菓子を勧めるかのように、事も無げに言った。

「でも…、藤堂さんもピアノをお弾きになるんですよね。」

すると、黙っていた朝比奈さんが言った。

「では藤堂さんには、また新しいピアノを差し上げましょうね。」

何て人達だ!

俺は頭の中の思考が、なかなか追いつかないでいた。