「ねぇ、間違っていたらごめんなさいね。」

俺は藤堂さんを見る。

俺がピアニストかどうか、聞きたいのかな。

そう思っていたら、予想外の事を言った。

「あなた、この大橋ピアノ、欲しいんじゃなくて?」

目を見開いてしまった。

この人には何でも見抜かれてしまっている。

「当たり…かしら?」

にこにこと聞いて来るから、頷くしかない。

「でもあなた、今オーストリアに留学中でしょう?」

「…は…。」

度肝ぬかれる。

俺の事知ってたんだ。

しかも留学中ということまで。

さっきこのピアノを探し求めた経緯を説明したとき、あえてピアニストだということは触れない様にした。

「実はね、私、あなたのファンなのよ。」

少女のように笑った。