四人で、穏やかな時間を過ごした。

紅茶は暖かい気持ちにしてくれた。

「じゃあ、私は今から調律を始めますね。」

そう言って、アタッシュケースを持ち上げピアノに向かう。

「僕、見てて良いですか?」

シオンが朝比奈さんの後を追う。

本当に子供みたいな奴。

朝比奈さんが音叉に手を伸ばし、本格的に調律を始めると、シオンはそばに座り込んだ。

俺と藤堂さんは、その間に、たくさん話をした。

俺がこのビアノに出会った経緯。

霧野さんの事。

そしてここまでどうやってたどり着いたか。

藤堂さんは、優しく頷いて、聞いてくれた。

「大冒険だったわね。」

ちょっと目をきらきらさせて、彼女は言った。

その間も、調律の音が鳴り響く。

その音が気持ち良い。