「んあああぁぁっ」
「くっ…」


彼女の最後の顔には、涙が光っていた。


気を失っている彼女の横で、俺は身支度を整え、静かに涙した。


もう会うことの無い愛する人。

どうか幸せで……


窓辺に立った俺の背中に音が当たり、反射した。

「ベズナルっ…このまま、私を連れて行って!」


振り返ることなんて出来ない。

泣き声、泣き顔、
必死で求めるあなたがいるとわかっていながら…。


「私はっ…あなたを愛してる。
この国なんて、どうでもいいと思ってしまうほど、あなたを…
あなただけを愛してる。」


必死な声…
本心なのは、わかる。


しかし、これ以上、彼女を苦しめることなんて出来ない。

「…あなたは、この国の王女。
俺なんかに嫁いではいけない人。
すでに婚約者も決まっているはずです。
どうか、一時の感情だけで自分の立場や未来を壊さないでください。」


俺は震えを全力で抑えながら、精一杯の強がりを見せた。


「イヤ…いやよ。
一時の感情なんかじゃないわ!
私は本当にあなたを「いい加減にしろ!」


溢れようとする涙を食い止めながら、大声で言った。