こうして彼女を抱いている間、いつも思う事がある。
このまま、彼女が俺のものになれば…
俺だけのものになればいいのに。
いっそのこと、このまま殺して、俺も後を追おうか…と。
そんなこと出来るはず無い。
彼女は一国の姫であり、すでに他国に婚約者もいる。
来月には、その者の許に嫁ぐ事になっている。
だからきっと…
こうして会えるのも、今日で最後だろう…
俺も彼女も、そう思い、確信している。
だからこんなにも、苦しくて悲しくて、辛い思いをし、辛い表情をしているのだろう。
「姫…姫…」
「んっ…ベズ、ナル…んんっ…名前で…呼んっでっ…」
彼女は望んだ。
俺に自分の名前を呼ばせることを…
しかし…
俺はそれに従うことは出来ない。
俺が彼女のことを、彼女の名前で呼ぶ時は、俺が彼女の隣に一生居ると決まった時。
その時は、俺が死ぬまで…
1万年後まで、きっと無い。
だから俺は呼ばない。
彼女の名を。