俺は彼女を抱き上げ、キングサイズのベッドに寝かせ、彼女のブロンドの髪を手で掬った。

髪に唇をあてると、心地よい香りが鼻を通る。

―――――――――
彼女とは2年前に出会った。

深い森の中。
俺は吸血鬼の長をしており、彼女が森の中で迷ったとすぐに知らせがきた。

この国の王女…
きっと美味な血を持っているだろう、と目を付けた俺は手を出すなとだけ部下に伝え、彼女の許に向かった。

迷い、途方にくれる彼女の背後から話しかける。

『…そこの者。何をしている?』

俺の声に振り返った彼女は、妖美でありながら、幼さもあり、一瞬で心を奪われた。

『あの…道に迷ってしまって。城までの道を教えていただけないかしら…』

ドレスの裾を掴みながら、俺に上目使いで頼む彼女は先ほどの美しさよりも、可愛らしさを感じさせた。

『…わかりました。こちらです…』

俺は、当初の目的を忘れ、彼女を森の出口へと案内した。


出口に着いた時、彼女は俺の黒いシャツの袖を引っ張り、言った。

『このまま、城にいらっしゃらない?』


あれ以来、長という身分上城にいれないので、満月の出る夜だけ城の兵にも王にもバレぬように、彼女の部屋に通っている。

彼女の血を頂くために。