美しく艶やかに光る厚い唇に、白い肌…
その美しい身体には、どんなに美味な真っ赤な血が流れているのか…

「…ベズナル、獣の目になってるわ。」

クスクスと笑う、目の前にいる彼女はこの国の王女である。

満月が南の空に上がりきった頃、白のカーテンを夜風が揺らした。


「…姫…俺…」

俺は、ゆっくりと彼女に近づき、彼女の肩に手を置いた。

そのまま首筋に唇を落とす。

赤い印を付け、それを確認してからそこに歯をたてた。

プツッ

肌に歯が刺さる音がし、口内に鉄の匂いが広がった。

「ふっ…」

彼女が息と共に声を漏らし、俺の胸辺りの真っ黒なシャツを掴んだ。

細い腕、足、指…
触っただけで折れてしまいそう…

人間ではない俺は、彼女に触れるのが苦手だった。


彼女の身体から力が抜け、崩れ落ちそうになった時、初めて自分が彼女の血を吸いすぎた事に気づき、彼女の首筋から口を離した。


危なかった…
もうすぐで、彼女の魂を飛ばしてしまうところだった。

自分の口端から流れる、彼女の血を手の甲で拭い、彼女の首筋に残った2つの穴をペロリと舐めた。