「色秦さん、喉の手術をうけると言うのは本当ですか!?」
ベッドの端を叩きながら、伊月さんは身を乗り出して聞いてきた。
私はその勢いに圧されつつ、ゆっくりと頷いた。
「もう歌えなくなるんですか!?」
もう1度頷くと、伊月さんはヘナヘナと崩れる様に床に座り込んだ。
「もう、歌聞けない…」
本当に残念そうに言う伊月さんに、心の中の2人の私が声をかけた。
「ごめんね。」という私と
「1番辛いのは私だ!!」という私。
2人目の私の方が、1人目よりも大きかったらしく、私は悲しく、辛く、苛立ちを感じた。
「……1番辛いのは、あなたですよね。すみません…。」
さっきまでの怒りはどこえやら、といった感じで、私の心を読み取ったのかと言うようなタイミングで、伊月さんは言って頭を下げた。
私は左右に首を振り、笑いかけた。
「力になれることがあれば、言ってください。手話の練習とか、色々。」
手話…そうか、手話があったんだ…
全然考えていなかった…
手術終わったら勉強しよう、と思っていると、伊月さんがいきなり私の手を掴んだ。
ビックリしたけど、手は動かさなかった。
「俺、『IF』の声や姿も好きだけど、詞も好きなんです。」
伊月さんは私の目を見てそう言うと、手を離して黙って病室を出ていった。
一体なんだったんだ、と眉をしかめていると、またノック無しにドアが開かれた。