混乱する頭の隅で、冷静な自分がいる。


こんな私を、大切だと思ってくれる人なんて、いるのかな…

頭を抱えていた腕を解き、唇から流れた血を指で拭った。

口の中は血、独特の味と匂いが広がっていた。


盛大なため息が漏れる。


気づかない内に流れていた涙も、布団にシミを作っていた。


看護師さんがこれを見たら叫ぶだろうな…


いつの間にか、窓の外は暗い月の時間から明るい太陽の時間になりだしていた。

皐月ちゃんも、伊月さんも、時沢先生も、眠っているだろう…
そして、また何時間か後に動き出すんだ。


こんな…
こんな醜くて、情けない、歌が歌えない歌手をおいて…