目を覚ます
目を覚ます…?
私はいつの間に眠っていたんだ?
それより、私はどうなったんだ?
ここは、私の病室。
腕には針が刺さっていて点滴へと繋がっている。
「目が覚めましたか?」
優しい綺麗な声がして、初めて看護師さんの姿を確認した。
柔らかく微笑んだ看護師さんは「先生を呼んで来ますね」と言って病室を出ていった…と同時に、退院したはずの皐月ちゃんが私服姿で病室に飛び込んで来た。
「日向姉ちゃん!!大丈夫なの!?」
「…っ…っ…」
声を出したいのに、声が出せない。
いつもなら出るはずの声が、出ない。
その事に焦ったのは私だけじゃなかった。
皐月ちゃんも、眉をハの字にして今にも泣きそうな顔をしている。
「声、出ないの?もうお話出来ない?もう歌、歌えない?大丈夫?」
大丈夫と言いたい。
皐月ちゃんを泣かせたくない。心配させたくない。
だけど声が出ない。
スーッと息が漏れる音だけがする。