「そんな奴、今すぐ別れちまえよ」
「そんな簡単に言うれろぉ、もう一緒に暮らしてるんらもん! 今は家賃支払ってるの美久だけど、名義は彼らもん。別れるって出て行くことになるもん。美久・・行くとこないもん・・ムリらもん」
 美久はお酒で口が回らなくなってたし、なんだか泣きそうになってた。
「まだ好きなのか、そいつのこと?」
 じっと美久の目を見つめる卓ちゃんの目。逸らせなかった。ホントにドキドキした。
「・・好きじゃ・・ない・・」
 思わず言ってしまってた。
「じゃあ、オレんとこ来いよ。そいつだって家賃払うやつがいなくなりゃ働く気になんだろ。男のためにもなんだぜ。働くようになったらまたそいつんとこに戻ればいいさ」
 不思議に説得力を感じて即うなずいてしまった。次の日には荷物をまとめて卓ちゃんの部屋に押しかけちゃった。彼氏がパチンコに行ってる間にね。その後、彼が働くようになったかどうかはわかんないけど。

 飛び込んだ卓ちゃんの部屋はワンルームで狭かった。ちょうど更新時期ってこともあって、美久のためにちょっと広い部屋に引っ越そうって言ってくれた。卓ちゃんは趣味のバイクにお金使いすぎちゃって余裕がないっていうから、代わりに敷金礼金は準備したけど、家賃はちゃんと半分コ。ラブラブな二人暮らしがスタート!
 新しい部屋は、卓ちゃんが好きなブラックでコーディネート! 電飾の仕事してるだけあって、センスあるんだぁ。ドクロの形した照明とかレトロな冷蔵庫とかアンティークなベッドとか・・窓際に並んでるアニメのフィギュアは余計かなとも思うけどね。
 不動産屋さんや引越し屋さんへの手配は全部卓ちゃんがやってくれた。テキパキ決めて、どんどん進めちゃう行動力のある卓ちゃん。美久はますます胸がキュンキュンなった。こんな男らしくて頼りになる男の人と結婚できたら、どんなに幸せだろう。やっと出会えたんだ、美久は。
 きっと卓ちゃんが美久の最後の恋になる-