悲しそうな表情や目をしているのを見て、ルイはこれ以上この話をするのをやめ、話を変える。

「忘れてたけど、さっき此処に居たザキとか言う不細工な奴は一体なんだ?」

 ルイは忘れてたように言う。マスターは苦笑して、ルイに丁寧に答える。

「ザキはこの町を牛耳ってる暴力集団の幹部なんです」

「暴力集団か、いつぐらいに現われたんだ?」

「数ヵ月前です。暴力集団の頭にはお尋ね者の賞金首ビルト・ルゲイエなんで、誰も逆らえなくて困ってるです」

 マスターは棚にコップを戻し、洗っておいたコップを拭きながら心底困ったように言う。ミリアは嫌な顔を浮かべ、どうすることもできず悲しい顔をする。
賞金首について補足しておこう。
その名の通り首に賞金を掛けられた人物のことを言う。ルイが所属している組織のリーダーが全世界や国に賞金首リストを送り、注意を促している。もちろん賞金首を倒した人は組織に知らせてくれたら、その近くにいる組織の役員が行き、確認したら賞金がもらえる仕組みになっている。
賞金首にもランクがある。
G…50万ベニー以下
F…50〜100万
E…100〜500万
D…500〜1000万
C…1000〜4000万
B…4000〜8000万
A…8000〜1億
S…1億〜3億
SS…3億〜5億
SSS…5億ベニー以上

 ルイはビルト・ルゲイエねぇと呟き、頭の中にある賞金首リストを見る。確か、1000万ベニー位の弱小悪党だった奴が小悪党に変わった程度の奴だっけ。まあ、序でに退治して小遣いもかねてやっつけておくか。頭の中で結論が出て、コップを拭いているマスターに言う。

「Dランク賞金首だから今すぐ狩ってくる」

 ルイはそう言って立ち上がろうとしたが、押さえられたの気付き抵抗するのを止め、細く白い手で押さえ付けた人物を見る。

「ミリアさん、この手を退けてくれないかな?」
「嫌です!自殺しに行くような人を行かせるわけにはいきません。ザキとは強さが違うんですよ!ザキに勝ててもビルト・ルゲイエには勝てませんよ…だから行かないでください」

 ミリアは瞳に薄らと透明な雫を蓄めて、手に力を入れる。
 ルイは心配してくれるのはうれしいけど、お節介なミリアに苦笑いを顔に浮かべ、どう説得するか考える。