「3年前に亡くなった王様のことは知ってる。
たしか……ハロルド・ミュウル・シィーダリス八世だっけ?」

 ルイは記憶を遡り、童顔野郎がそんなこと言っていたのを思い出し、少し間を置いて曖昧だが言う。マスターは頷き話の続きをする。

「そうです…王は庶民のことを優先的に考える人でした。市民に人気があり人望が厚い方だった。それに反し、庶民に優先的に考える王に対して反対派の側近もいた。それでも反対を押し切って、王は市民が差別無く快適に暮らせるように頑張って居られた。それが…あんな形で亡くなられるなんて……誰一人として思わなかった…」

 マスターは懐かしそうに、そして悲しそうな表情をして語っている。ミリアもそれを聞いて何処か悲しげな表情をしていた。
 ルイは二人の様子を見て、王がこれほど迄にも市民に絶大な人気があり、慕われてたかがマスターやミリアを見て分かる。それ程までに偉大な王だったのかとイメージを膨らませた。
 ルイはマスターに聞き辛いが、どうしても気になることを聞いた。

「王様はどういう風に亡くなられたんだ?」

 辛そうな表情をしながらもマスターは、はっきりと言う。

「お城のテラスから転落して亡くなられたんだよ…」

「転落死か…」

 ルイはマスターが言ったことについて考える。一国の主人がテラスから転落して亡くなるなんて明らかに不自然なのは見え見えなのだ。子供でもない大人の王がテラスから顔を出して、その拍子に落ちたなんて普通に考えればありえない事だと分かること。そうなると疑問が出てくる…証拠も出ず、どうやって王をテラスから転落させたかだ…
催眠術か、それとも魔法でか、突き落としたのは論外だが少しの可能性はあるな。
そういえば今の王って誰なんだ?と思った瞬間にマスターに聞く。

「今の王様って誰?」

「レミィ・ミュウル・シィーダリス九世…まだ17歳の少女だよ。王に就任したのは14歳の時だったかな」

「そうか…その王さまの政治はどうなんだ?」

 マスターはコップを拭きながら複雑そうな表情をして言う。その様子を見たルイはやっかいで複雑なことに巻き込まれたと落胆する。と同時にこのことに自分を派遣した童顔野郎に恨めしい気持ちをも抱く。もちろん表情には出さず心の中でだが。続いて質問した。