ザキを倒したのは一瞬のことだった。
ザキが白銀色の髪をした青年に殴り掛かったが、空を切る。どこに行ったのか周りを見回す前に耳元で声が聞こえたと同時に、首元に強い衝撃が入り意識を手放した。
ザキが意識を手放す前に聞いた言葉はこんなこと言葉だった。

「不細工なくせしてここまで弱いと可哀相になってくるな」

 この言葉に怒ることすらできずザキは意識を手放したのだった。

 酒場内は未だ静寂が辺りを包み、呼吸音だけがかすかに聞こえる。まだ呆気に取られているを見て青年はザキの子分達に話し掛けた。

「なあ、この不細工さっさと連れてここから消えてくれないかな?目障りだから。あっ!それともここで白目剥いて泡を吹いて、更に不細工になってる奴みたいになりたい?」
 青年は綺麗な微笑みから凶悪な笑みへと変化し恐ろしいことを言う。
 脅しとも取れる言葉を聞いた子分達はブルブルと勢い良く左右に頭を振り、急いで白目剥いて泡を吹いてるザキに近寄り、担いで直ぐ様酒場から出ていった。
 それを見届けた青年はやれやれといった感じでため息を吐き、尻餅をついている女性従業員に近寄り抱き起こした。
抱き起こしたことによりお互いの顔が近づき、息がかかる近さまできた。青年は改めて近くにきたことによって女性従業員の可愛さに気付く。目が大きく長い睫毛にパッチリ二重の目蓋、茶色い髪は肩を越えるセミロング位の長さで、ピンクの唇。守ってあげたい可愛さだなと勝手に納得し、こりゃもてるなと思う。
 従業員の女性は恥ずかしげにほんのり赤み掛かった頬に熱を感じ俯く。 青年は何処か怪我したのかと思い下から覗き込むと更に顔を赤くする。訳が分からずどうすればいいのか考えると、女性から話し掛けてきた。

「あ、ありがとう……」

「どういたしまして」

「ミリア大丈夫か!?」
 マスターはカウンターから出てきて可愛らしい女性に近寄り話し掛けた。
 ミリアと呼ばれた従業員はマスターの無事を知り、安堵の表情をしてマスターに返事をする。

「うん、大丈夫よパパ」
 ミリアのいった言葉に驚いた表情をする。そして二人の顔を交互によくみて呟く。

「似てないな」

「よく言われます」

 青年の呟きを聞き、ミリアは苦笑いを顔に浮かべ可笑しそうに言う。