俺は、ただただその男を殴り続けた。

意識は無いのに、殴り続けた。

もう、止めたかったのに止められなかった。


パシッ


そんな時、俺の拳は止められた。




「もう、止めろ。これ以上やったら死んじまうぞ。」


初めて聞いた低い声に現実に戻されて、初めて殴ってた男の顔を見た。


最初の形がわからないほど、ボロボロだった。

その瞬間、俺は怖くなった。



もう、止めたかった。

家に帰って、家族と一緒に笑いながらご飯を食べたかった。

姉貴とバカなケンカして、仲直りして笑いたかった。

たまに、母さんの家事を手伝いたかった。

親父と一緒に2人でどこか遊びに行きたかった。







あぁ、俺はただ家族に必要とされたかったんだ。